G front特集

リポート1 静岡文化芸術大学

静岡文化芸術大学に見るユニバーサルデザイン建築の実際

 静岡文化芸術大学(浜松市)は、施設の随所にユニバーサルデザイン(UD)の理念を取り入れた大学として、2000年4月の開学以来、見学者が殺到している状態だ。
 同大学は、静岡県と浜松市、地元産業界が協力して運営する「公設民営方式」の大学。静岡県は“快適空間しずおか”の創造をめざし、1999年には企画部にユニバーサルデザイン室を設置するなど、UDの理念を積極的に県の政策のさまざまな局面に取り入れている。その方針から、同大学はUDに基づいて建設されることになったそうだ。また、デザイン学部はUDをカリキュラムに取り入れ、21世紀に向けたデザイン教育を行っている。
 施設建設にあたっては、静岡県都市住宅部が昨年12月にまとめた「ユニバーサルデザインに基づく公共建築物の企画設計の考え方」に則って行われた。玄関、サイン、出入り口の形状、トイレの種類・形状など18項目について、ユニバーサルデザイン基準を設定し、それに基づいて設計・施工を実施。段差のない玄関、すみずみまで伸びた視覚障害者向けの点字ブロックなど、至る所にさまざまな工夫が施されている。
 「一つひとつを取り上げると、特に目新しい新しい技術ということではないのですが、ここまで徹底してUDを取り入れたということでは、日本でも初めてなのではないでしょうか。ただ、UDは理念であり、具体的で共通の基準があるわけではありません。その意味で、まだまだ発展途上ですね」と、同大学企画室主査の新谷直幸さん。
 「実際、段差のない入り口は出入りしやすいのですが、大雨が降った時などの雨水対策に問題があります。そういった管理面やコスト面から、まだまだ検討の余地はありそうです。また、例えば点字ブロックの1列の凸数が、学内では6×6ですが、市の点字ブロックは9×9といったように統一性がありません。そのため、障害者の方が戸惑うこともあるそうです。今後は、そういった点が検討されていくのではないでしょうか」
 まだ開学間もないこともあって、施設利用者のUDに対する意見や感想はあまり聞こえてこないというが、使い勝手の良さを当たり前ととらえられる状態は、ある意味でUDの理念そのものともいえそうだ。


出入り口 広くスムーズに通過できる出入り口
28カ所ある施設への出入り口すべてに、有効幅120cm以上の自動ドアを採用。出入り口の大ガラス面には、衝突防止のシールが貼られている。施設の内外の床には段差がなく、車椅子の人や視覚障害者も出入りが楽だ。特にメインの入り口は全面スロープになっており、従来のように一般用と車椅子用といった区別をしていない。

スロープ 段差をスロープ化で解消
施設内の段差は、スロープ化することで解消している。スロープの勾配は1/12以下(静岡県のUD基準では1/15以下)で、弾力があり、すべりにくい素材を使用。高さ75cm以内ごとに、中間の踊り場を設置している。

階段/廊下 出入り口踏み面30cm、幅150cm以上で階段も上りやすく
施設内の主要な通路には点字ブロックが敷設され、わかりやすく単純なルートでタッチパネル方式の案内所まで誘導されるようになっている。ちなみに、警告ブロックは階段などから30cm離して設定されている。廊下幅は狭いところで131cm、最大で163cm。通行の邪魔にならないよう、無駄な凹凸をなくしている。階段は踏み面30cm、幅150cm以上あり、勾配もゆるやかだ。

身障者用トイレ/トイレ入り口 誰でも利用できる多目的トイレを設置
35カ所に用意されているトイレのうち、15カ所が車椅子対応。そのうち5カ所はベビーシート付きだ。女子トイレの5カ所にもフィッティングフロアーがついているので、親子連れで利用する場合にも便利だ。トイレのサインは、男性、女性、男女・親子・身障者の3種類。トイレサイン手で触れて男女の違いがわかるようにという配慮から、トイレ入り口には壁に手をついたときに触れるような高さで、表示サインに合わせた立体感のある表示板が設置されている。
トイレサイン

案内サイン1 案内サイン2見やすさを考えた案内サイン
案内サインは、同大学のシンボルカラーであるブルーを基調に、白抜き文字で表示している。点字案内板も全部で11カ所に設けられ、誘導音による誘導も行われている。

電光掲示板 緊急連絡用の電光掲示板
学生ホールなど多人数で利用する場所3カ所には、電光掲示板が用意されている。日常は学内のインフォメーションや時間表示に利用されるが、緊急時には聴覚に障害のある人に情報を流すといった使い方を想定している。

水飲み場 水飲み場、自動販売機
水飲み場は子供も利用できる高さで、車椅子のフットレストが入るものを使用。周辺は1.5m×1.5m程度のスペースが確保されている。自動販売機のコイン投入口はコインを滑らせて入れるタイプ。商品を番号で選ぶボタンを設置し、取り出し口は立った状態でも、車椅子に座った状態でも取りやすい高さに設置されている。

駐車場 専用駐車場や受付カウンターなど
幅350cm以上の車椅子用ドライバー最優先駐車スペースを3台分確保。また、事務局や図書館の受付カウンターは2段階にし、車椅子のフットレストが入るタイプを使用するなど、細かい部分にまで配慮が行き渡っている。


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